AMタイプ別にみた不動産私募ファンドのLTV分析

私募投資顧問部 研究員   竹田 優里

要約・概要

 不動産証券化協会および三井住友トラスト基礎研究所は、不動産運用会社へのヒアリングによる「不動産私募ファンドに関する実態調査」を半期に一度実施している。調査の結果、私募REITを除く私募ファンドの平均LTVは、過去最低であった2021年1月調査の57.8%に対し今回調査では63.5%となり、改めて上昇基調が確認された。特に、直近3回の調査期間において水準が切り上がっている。

 その背景には、キャップレート低下を主因に不動産価格上昇が続く中でも、投資家の期待利回りは下方硬直的なため、LTV引き上げにより利回り確保を狙うファンドが増加したことがあると見ている。外資系AMはコア投資以外が多く、高めの利回り確保が必要でコロナ禍でも高めのLTVを維持したのに対し、国内系AMはコア投資が中心であり、コロナ禍のリスクオフでLTVは一旦引き下げられ、その後コロナ禍の出口が見えた直近3回の調査期間において水準が切り上がり、これが全体のLTVを押し上げている。

 先の実態調査では、今後1年以内に組成予定のファンドの平均LTVも調査している。その水準はコロナ禍当初に一旦低下したものの、その後は直ぐに65%前後に引き上がって推移している。これに対して、現在運用中の平均LTVは直近3回の調査期間の上昇で漸く65%前後の水準に追いつき、足元では利回り確保のためLTVをやや高めるファンドと先行き不安からLTVをやや抑えるファンドが混在する状況である。日銀のマイナス金利解除が近づいているとの見方が広がり、キャップレート低下、不動産価格上昇にも歯止めがかかる見通しであることも勘案すれば、足元のLTVの上昇にも歯止めがかかると見ている。

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私募投資顧問部 研究員 
竹田 優里

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