不動産マーケットリサーチレポート最新号 発行 
日本の不動産市場の見通し
 ~期待利回りの低下余地は小さいが、NOIの増加により不動産価格は高止まりの見通し~

株式会社三井住友トラスト基礎研究所

 株式会社三井住友トラスト基礎研究所は、国内主要都市の不動産市場の見通しを示した不動産マーケットリサーチレポートの最新号(2015年11月時点調査)を発行した。以下では、不動産マーケットリサーチレポートの要点を示す。

変化する経済環境

 この半年間で経済環境は大きく変化した。新興国経済の減速が鮮明となり、先進国経済にも影響が及び始めている。原油価格の下落は一段と進み、金融市場はリスク回避姿勢が強まって大幅に調整された。米国の利上げは決定したものの、利上げペースは世界経済の状況を考慮して緩やかになるとみられる。
 このような状況から、為替市場では投資家のリスク回避姿勢を反映して一層の円安は期待しづらくなってきており、日本の景気回復は緩やかになるとみられる。

低下余地が小さくなった期待利回り

 不動産価格の上昇を牽引してきた期待利回りの低下は依然として継続している。期待利回りの水準は金融危機前の最低水準に既に到達しており、加えてここにきて一層の円安が期待しづらくなってきたことや、世界の中で見た東京の賃料・価格の上昇期待の相対ポジションがやや後退してきたことから、期待利回りの低下圧力は弱まっていくとみられる。
 しかし、依然として資金流入圧力は強い側面もある。世界的な金融緩和と低金利の状況は当面継続するため、投資家はリスク分散を図りながら、より高い利回りを得る必要があり、不動産への期待は大きい。世界の不動産私募ファンドの投資資金のうち、投資されていない手元資金は一層増加している状況にある。また、米国では利上げによりイールドギャップが縮小していくため、日本は相対的には魅力的となる。日本では公的年金による不動産投資の準備が進んでおり、実行されれば追随する企業年金が増加する可能性もある。さらに東京の賃料の上昇期待はやや弱まったと言っても緩やかな上昇は継続する見込みであり、期待利回りの低下圧力になる。
 このような状況を総合的に踏まえると、期待利回りの低下余地は小さくなったものの、短期的には比較的高い利回りを確保できる地方都市を中心にわずかに低下し、中期的には横ばいで推移すると予想される。なお、クロスボーダー資金の大量流出が懸念されるところだが、東京のクロスボーダー資金の割合は上昇しているものの海外主要都市と比べ依然として低く、買い越しになっていない。優先順位の低い物件では一部売却が出てくる可能性はあるものの、大量流出には至らないと考えている。

不動産価格の上昇を支えるNOI

 これまで不動産価格の上昇を牽引してきた期待利回りが横ばいで推移すると想定すると、不動産価格動向の鍵を握るのはNOIということになる。主要セクターの東京のオフィス市場では、空室率の低下が進んでおり、足元で約4%となっている。低供給・低需要型の市況回復であることや、テナント移転動向が鈍く空室期間が比較的長いことから賃料上昇ペースはなかなか高まらないが、緩やかな上昇は継続している。
 2016年は新規供給がやや多くなるが、新規供給ビルのリーシングは概ね順調であり、空室率の上昇は小幅に留まると予想している。その後、2018年までは新規供給が抑制気味に推移するため、新規需要は小幅であっても空室率は緩やかに低下していくとみられる。新規成約賃料は2017年に一度踊り場を迎えるものの、その後は大量供給となる2019年までは緩やかな上昇軌道に戻していくと予想している。
 期待利回りの低下余地が小さくなったことで不動産価格の上昇ペースは鈍化するが、NOIの増加が支えとなって不動産価格は緩やかな上昇・高止まりで推移すると予想している。

増大するリスク

 このようなメインシナリオではあるが、下振れリスクは増大している。前回(2015年8月11日)のリリースレポートでは、リスクとして、想定外の金利上昇、中国の景気減速、賃料上昇期待の裏切り、連続するイベントの作用(2017年消費増税、2018年日銀総裁任期満了、2019年オフィス大量供給)を挙げたが、ここにきて地政学リスクの拡大(テロ地域拡大、欧州難民問題、北朝鮮)、円高への反転(企業業績悪化、株価下落、海外資金の物件売却増加、訪日外客の減少)、オイルマネー系SWFの投資資金の縮小等、リスクは増大している。リスクシナリオを念頭に置いた投資行動の必要性が高まっている。

不動産マーケットリサーチレポートのご案内

 三井住友トラスト基礎研究所では、全国主要都市の不動産賃貸市場、不動産投資市場の将来見通しや、その市場特性・動向を「不動産マーケットリサーチレポート」として年2回(6月、12月頃)とりまとめ、販売しています。

レポートの構成

第1章 経済環境編
第2章 不動産賃貸市場 (オフィス編)
第3章 不動産賃貸市場 (住宅編)
第4章 不動産賃貸市場 (商業施設編)
第5章 不動産賃貸市場 (物流施設編)
第6章 不動産賃貸市場 (ホテル編)
第7章 不動産投資市場編
第8章 資産価値変動リスク編

レポートの種類・販売価格

  サイズ・形式 :A4サイズ、フルカラー、簡易製本・CD-R(PDFファイル格納)を提供
  ページ数   :本編(日本語版) 300ページ程度、要約版(日本語版・英語版) それぞれ50ページ程度

  • レポートには、内容の充実した「本編」、要点を簡潔にまとめた「要約版(日本語版・英語版)」があり、全章セット、章別のいずれでもご購入いただけます。
  • 販売価格については価格表をご用意していますので、投資調査第1部・第2部へお問い合わせください。
  • 2014年度は、J-REITおよび不動産私募ファンドの運用会社、建設・不動産会社、金融機関、リース会社、投信委託会社など26社に提供しました。
  • 経営計画や不動産投資戦略の策定、キャッシュフロープロジェクションの作成、不動産開発事業のタイミングの判断、不動産投融資のリスク管理、投資家等資金提供者への説明等、幅広い用途にご活用いただける内容となっております。

※不動産マーケットリサーチレポートの、より詳しい内容は、当社ウェブサイトをご覧ください。
◆ 不動産マーケットリサーチレポート
 ⇒ https://www.smtri.jp/service/report/market_research_report.html

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