博物館・美術館運営における民間活用(下)
 ~様々な官民連携スキーム~

PPP・インフラ投資調査部 副主任研究員   岩瀬 有加

要約・概要

 「博物館・美術館運営における民間活用(上)~収益構造にみる各施設の運営状況~」 では、博物館・美術館の運営において、資金調達は重要な課題で、公的支援以外の資金調達手段を考えることが必要と述べた。
 実際に官民連携を行っている博物館・美術館では、どのような運営スキームが採用されているのか。本稿では、以下の3つの事例を用いて考察を行った。
 ①混合型のコンセッション方式を採用した大阪中之島美術館
 ②PFI(BTO方式)と指定管理者制度を併用した鳥取県立美術館
 ③負担附き寄附の仕組みを活用した三鷹の森ジブリ美術館
 それぞれ異なる手法ではあるが、①、②は、長期契約を前提として、サービス対価の支払いと事業者による利用料金の直接の収受を組み合わせることで、美術館運営に求められる長期的視点からの運営を可能としている。また、投資採算性の低さを一定程度補い、かつ事業者のインセンティブを高めるといった経済効果を確保している点においても、類似したスキームとなっている。③の三鷹の森ジブリ美術館は、ジブリという強いブランド力を持ち、差別化を図ることで可能な仕組みと考察される。博物館・美術館の運営は投資採算性の低い構造となっていることから、いずれの事例においても、民間事業者にとって、安定的な収益確保と運営は重要なポイントとなっていた。
 中之島美術館、鳥取県立美術館の開館はこれからであり、どのように差別化を打ち出していくのか、今後の運営が注目される。また、老朽化が進む他の博物館・美術館は、今後の再整備において、こうした官民連携スキームの導入や、さらに新しいスキームが検討されることも想定されるが、博物館・美術館では一定のリピーターを作ることも重要な施策の一つとなっており、そうした"ファン"と一体になって施設を支えるような投資スキームにも期待したいところである。

(本レポートは、一般社団法人不動産証券化協会「ARES不動産証券化ジャーナルVol.58」掲載論文を基に、加筆・修正したものである。)

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