【海外不動産レポート】
高級ブランド時計と紙おむつ
-香港の商業施設市場の変容-

海外市場調査部 副主任研究員   安田 明宏

<要約・概要>

  • 中国大陸から香港を訪れる観光客やビジネス客(中国人訪港客)の数は増加傾向をたどってきた。2003年から導入された「港澳個人遊(Individual Visit Scheme、IVS)」により、香港への個人旅行が可能になったことが最大の原因。中国人訪港客の中でも、日帰り客が増加している。
  • 中国人訪港客の「宿泊して高級ブランド品を購入する」消費パターンに加えて、「日帰りで日用品を購入する」パターンも広がった。背景には、人民元高や中国国内製品への不信感などがあげられる。日用品への需要が高まる一方、高額商品の売上高は減少傾向にある。
  • 足元の商業施設の賃料は、高級ブランド店が集中する中心エリアで天井感が見られる。一方、日用品を取り扱う店舗需要は郊外を中心に強まっており、賃料の上昇につながっている。
  • 香港側のボーダーに近い住宅エリアは、中国人訪港客が買い物で集まる場所に変貌した。紙おむつや粉ミルクなどが飛ぶように売れている。
  • 中国人訪港客数は増加しているものの、伸び率は縮小傾向にある。中国人訪港客を主な顧客とするような小売店は、相応の方向転換に迫られることになる可能性が高い。

 訪港客数薬局の陳列風景(上水)

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