三井住友トラスト基礎研究所は、2003年12月より、不動産私募ファンドを組成・運用している企業へのアンケート調査、ヒアリングおよび各種公表データや報道資料に基づいて、不動産私募ファンドの市場規模やファンド組成動向などを公表しています。

2025年6月末時点の市場規模

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<不動産私募ファンドの市場規模は、私募REIT・グローバルファンドを含めて44.9兆円と推計>
 2025年6月末時点の不動産私募ファンド(私募REIT・グローバルファンド含む)の市場規模(運用資産額ベース)を44.9兆円と推計した。この数値は、ARESが把握している国内私募REITおよびSMTRIが把握しているグローバルファンド(※)の国内不動産運用資産額を含んでいる。前回調査の運用資産額(2024年12月末時点:40.8兆円)から約4兆円増加し、増加幅は前回調査の+5.7%から+10.0%へと拡大した。運用資産規模を拡大させた運用会社数は、規模を縮小した運用会社数を上回っており、国内系・外資系運用会社双方で増加幅が大きいケースも相当数みられた。私募ファンド市場の拡大ペースが加速している。
 2025年上半期は1月の日銀による政策金利引き上げ、トランプ関税など不動産市場への影響が懸念されるイベントが複数発生したものの、結果として不動産私募ファンド市場へのマイナスのインパクトは観測されていない。国内投資家では一部の国内金融機関が不動産投資額を減少させる動きがみられたが、全般的に投資姿勢はやや改善しており、海外投資家はアジア圏の投資家を中心に日本の不動産への投資を積極化させる姿勢が目立った。引き続き不動産投資市場に国内外の豊富な投資資金が流入している。デット資金調達環境についてもあまり変化はないと考える運用会社が大半を占めている。一方、不動産価格の高止まりと金利上昇懸念により、利回り確保の観点でレバレッジを高める動きがやや強まり、ファンドの平均LTVの上昇傾向が継続している点には留意が必要である。
(※)グローバルファンド・・・日本以外の国も投資対象とするファンドとして当社が定義

<エクイティ投資意欲は概ね堅調。現時点でトランプ関税や日銀の利上げ、建築費高騰の影響は限定的だが、今後の動向には注視が必要。>
 資金調達環境と不動産取引状況をまとめると、国内金利の先高観を受けて、一部のエクイティ投資家に慎重姿勢がみられるものの、日本への投資を積極化させている海外投資家も目立ち、デット調達環境も特段変化がないとする回答が多い。現段階では金利環境の変化による影響は軽微であり、エクイティ・デット共に概ね良好な資金調達環境が継続している。不動産ファンド運用会社による不動産取引についても、近年の調査との比較では水準に大きな変化はない。
 トランプ関税による投資方針への変化に関する質問では、「変化があった」とする回答は4%にとどまり、「変化がなかったし、今後も当面ない」が70%を占めた。 金利の先行き不透明感による投資方針への変化に関する質問では、「変化があった」とする回答は18%にとどまり、「変化がなかったし、今後も当面ない」が46%を占めた。ただし、約3分の1が今後の状況次第で変更を検討すると回答しており、その際の10年国債金利水準の目安は2.0%以上との回答が多くみられた。建築費高騰による投資方針への変化に関する質問では、「変化があった」とする回答は22%となり、「変化がなかったし、今後も当面ない」は53%で最多となった。昨今の不動産市場を取り巻く様々な外部要因の影響は、現時点では限定的といえるものの、変化があったとする回答も一定数存在しており、今後の動向を引き続き注視していく必要がある。

より詳細な資料はこちら

「不動産私募ファンドに関する実態調査 ~2025年7月 調査結果~」(PDF:7.5MB)
─ 不動産私募ファンドの市場規模を私募REIT・グローバルファンドを含めて44.9兆円と推計

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