廃墟とインフラ

投資調査第1部 副主任研究員   田中 可久

 ふと深夜にテレビを見ていると目に留まる映像があった。ここ数年、一部では流行とも言われる“廃墟”の番組である。もともと建築を学んだこともあり、構造物全般には興味があるが、今回、アメリカのバッファロー・セントラル駅(Buffalo Central Terminal)には、ふと考えさせられるものがあった。

 まず、見ていただくのが一番。某地図検索サイトなどで“Buffalo Central Terminal”と入力すればすぐに出てくる。五大湖ほとりのニューヨーク州第二の都市、バッファローの郊外。いかにもアメリカらしい低層の住宅街に、突如、15階建ての塔屋を有する巨大な構造物が現れる。管理しているNPOのHPによれば、最盛期には、一日200本以上の列車乗り入れ、10,000人以上の利用者がおり、1979年(昭和54年)まで使用されていた駅舎とされている。貨物列車の多さなどの違いもあるが、関東でいえば千葉県や埼玉県のベッドタウンの駅、関西では中核市にある和歌山駅や滋賀の大津駅などが一日の平均利用者数で15,000~20,000人程度、列車本数で100~300本程度であることを考えれば、立派な鉄道インフラと言えよう。

 それが、1979年以降は、路線(線路)ごと変更され、代替はバッファロー・ドピュー(Buffalo-Depew)駅として、全く別の場所に置かれた。“Buffalo-Depew”も検索していただければ分かるが、今度の駅はアメリカ全土でおなじみのアムトラック(Amtrak)管理の下、コンビニ並みの駅舎であり、そのギャップに驚かされる。当時のモータリゼーション進展などという契機はあったものの、主要なインフラ機能をここまでドラスティックに変えてしまう。ある意味アメリカらしい一面でもある。日本の山間部にたたずむ廃線・廃駅とは趣がかなり異なるのだ。ただ、ここまで大胆にインフラ機能を変更・廃止してしまうと、その構造物は廃墟として残りつつも、良い面として、そこに市民の無駄な負担はなくなる。心象はもの悲しくはあるものの、見方を変えれば、廃墟万歳なのだ。

 国土の広さや鉄道史の違いなどはあるが、はたしてこの思い切った選択が日本にもできるだろうか。近年、JR北海道の再生提言書における廃線含めた事業範囲見直しや、道路事業における道路IR(道路行政評価)サイトの開設など、徐々にではあるが、選択と集中の概念は浸透してきていると言えよう。しかし、逼迫しつつある財政に加え、人口減少時代に突入した今、社会・経済構造の変化は既に始まっている。消滅可能性都市などが議論されるようになった昨今、少々ドラスティックな対応も考えるべきではないか。一つ、コンパクトシティ(改正都市再生特別措置法)のような政策でも、単に駅前再開発を促すような配置転換ではなく、産業政策なども横断的に考慮し、また既存の市町村エリアにこだわらないような発想が欲しい。例えば、山間部に肥沃な農業地帯があるのであれば、市街地整備を抑え、農産物の輸出も含めた地方空港の活用など、交通ネットワークの再編を含む物流インフラ整備に資金投入するなどの選択肢もありうる。今年に入り、コンパクトシティに関しては形成支援チームなる省庁横断組織が立ち上がっている。是非、民間の発想も取り入れて大胆な変革に取り組んでもらいたい。

 変革を求めれば、もしくはそれに応えれば、アメリカのようにそこでは何らかの構造物が使われなくなるかもしれない。ただ、空き家や空き工場など、意図せざる構造物の放棄と異なり、変革を受け入れた後に残る構造物は、単なる廃墟としてだけではなく、一つ進化の象徴となりうるはずである。

 弊社オフィスの隣だからというわけではないが、最近、テレビ東京の「廃墟の休日」という番組にて、バッファロー・セントラル駅が取り上げられた。HPにも映像があるので是非ご覧いただきたい。皆様の目にはどう映るだろうか。

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