「アナと雪の女王2」と気候変動

私募投資顧問部 主任研究員   菊地 暁

 現在絶賛上映中の「アナと雪の女王2」を観に行った。今回の作品は、人種迫害と気候変動を主要なテーマとしたのかな、と感じた。先住民を迫害し、彼らをすみかから排除した後、そこにダムを造り、自然を破壊する。一方で、自然は開拓した人間達に牙を剥き、襲いかかってくる。ダムを環境破壊の象徴とし、これを破壊することで自然と共生するストーリーは、治水事業の観点から議論の余地があるかもしれない。とはいえ、少なくとも、ディズニーは映画を通じてダイバーシティ(多様性)と気候変動の双方について問題提起をしているのではないか、と感じた。

 気候変動について眼を向けると、我が国では猛暑が続き、秋には巨大な台風により甚大な被害が発生したのは記憶に新しい。もはや、異常気象が「通常の」気象となりつつある。今後、我々の住む環境はどうなってしまうのだろう。環境省「2100年 未来の天気予報」では、日本全国の最高気温が軒並み40度を上回り、那覇が最も気温が低い※1と、にわかには信じがたい予報を公表している。この予報が現実となる日が来るのだろうか。

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資料提供)環境省「2100年 未来の天気予報」
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/2100weather/

 そんなことはありえない、と目をつぶるわけにはいかない。2007年の公開映画「バブルへGO」では、「銀行が潰れるわけないだろ」とのセリフがあった。バブル後に日本経済がどのような経緯を辿ったかは周知の通りである。ありえない、想定外の事態、はしばしば起こる。なってから、では遅い。

 もちろん、我々も手をこまねいているわけではない。三井住友トラスト・ホールディングスは、SDGs及び気候変動に関するパリ協定と整合性をもって戦略的に事業を行うために最大限の努力をすると宣言し、2019年9月に「責任銀行原則(PRB:Principles for Responsible Banking)」に署名した。10月にはコーポレートファイナンスにおける「ESG・SDGs支援枠」を設置し、持続可能な社会の構築を目指している。今後も更なる課題解決に向けた支援策が打ち出されるに違いない。

 現在マドリードでは、COP25(第25回気候変動枠組条約締約国会議)が開催され、地球温暖化防止に向けた真剣な議論が行われている。先日のスピーチで一躍有名となったスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんも駆けつけた。彼女の言動はパフォーマンスと批判する向きもあるが、気候変動に関する報道が増え、議論する機会を提供した意義は大きい。我が国の温室効果ガス排出量は着実に減少※2しているものの、石炭依存度が高いことを理由に「化石賞※3」を受賞するなど、国際社会からは厳しい目が向けられている。

 気候変動にどう立ち向かうか。「ひとりひとりが意識を高め・・」と言うは易し、実際には国レベルでの環境規制強化と、機関投資家等の意識改革、産業イノベーションでの解決が主となるだろう。個人レベルでは環境関連の報道に耳を傾け、自らの課題として考えることから始めたい。

 ・・・そんなことを考えながら映画を観ていたら、内容がちっとも頭に入ってこなかった。年末には子ども心に戻って、もう一度「アナ雪2」を観に行こう!

 ※1 周りが海に囲まれており、海水温度はあまり上昇しないことが理由として挙げられる。
 ※2 2018年度の温室効果ガス排出量(速報値)(2019年11月29日公表)
 ※3 国際環境NGOが地球温暖化対策に消極的とされる国に与える不名誉な賞を指す。

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