「「社会的インパクト不動産」の実践ガイダンス」公表を契機に社会的課題解決取組策のあり方を考える

私募投資顧問部 上席主任研究員   菊地 暁

 国土交通省が設置した「不動産分野の社会的課題に対応するESG投資促進検討会」は、2年にわたる有識者による検討を行い、我が国における社会的課題として挙げられる少子高齢化への対応や自然災害への備え、地域活性化、多様な働き方・暮らし方の実現等に関するESG取組の評価項目(アクティビティ)を整理し、その集大成として「『社会的インパクト不動産』の実践ガイダンス-評価と対話のツール-」(以下「ガイダンス」という)を3月24日にリリースした。このガイダンスでは、社会価値を創出する不動産を「社会的インパクト不動産」と定義し、社会的課題や環境課題解決への貢献を通じ、不動産そのものの価値を持続的に高めるとともに、当該不動産を保有する企業の持続的成長に資する不動産のあり方について解説している。
不動産ESGのうち、環境(E)はGHG排出量削減等の地球温暖化対策、省エネルギー、水・廃棄物削減等取組内容が明確であり、定量目標を定めて取り組みやすい一方、社会(S)は取組内容が多岐にわたり、また定量目標の整理が十分ではなかったため、これらを体系的に整理する必要があった。このガイダンスでは、社会(S)のアクティビティを体系的に整理し、どのような取組をすればどのSDGsゴールを達成することになるかが一覧で理解できるように工夫されている。また、社会的インパクトを創出するまでのアクティビティ、アウトプット、アウトカムについて取組内容ごとにロジックモデルを作成し、定量評価項目を例示しているため、注力すべきポイントを把握しやすい。さらには、実際の取組事例や評価事例を豊富に掲載するなど、実務者向けとなっていることがこのガイダンスの特徴である。

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トピック

  • 国土交通省が「「社会的インパクト不動産」の実践ガイダンス」を公表
  • 社会的課題を階層として整理しつつ、持続可能な社会の実現を欲する高次の社会的課題を捉える
  • 「環境不動産を包含する概念として「社会的インパクト不動産」と定義
  • 「社会的インパクト不動産」に不可欠な2つの対話
  • 社会的課題解決に向けたロジックモデルを活用しよう
  • ガイダンス公表が社会(S)を真剣に考える契機となる

※社会(S)に関して執筆したこれまでのレポートを取り纏めて作成
(一般社団法人環境不動産普及促進機構 「RE-SEED(Vol.28)」 寄稿)

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