商業地やプライム住宅地で地価上昇が踊り場を迎えた可能性
 ~東京23区における土地取引の実勢価格(2014年上期)~

投資調査第2部 副主任研究員 竹本 遼太

<要約・概要>

  • 東京23区の住宅地価格と商業地価格について、国土交通省「不動産取引価格情報」の土地取引事例をもとに取引実勢ベースの変動率を推計したところ、2014年上期は住宅地で前年比+5.6%と2013年下期から上昇幅を拡大させた一方、商業地では同-3.0%の下落を示した。
  • 住宅地に関して東京23区を4つのエリアに区分すると、品川区や豊島区を中心に周辺の鑑定評価額を上回る単価での取引が多数見られた都心業務地エリアでは、実勢地価が前年比+11.5%と上昇ペースが加速しており、4エリアの中で上昇率が最も高い。一方、都心の高級住宅地があるプライムエリアでは、前年比-0.4%と実勢地価の上昇が一服した形となった。
  • 雇用所得環境の改善や将来の人口減少を見据えた居住地選択が、東京都区部の人口集中につながる中、東京23区の全般的な住宅地価は取引実勢ベースで上昇幅を拡大させている。また、商業地やプライム住宅地では実勢地価の上昇が踊り場を迎えた可能性があるものの、土地取引件数が相対的に少ない用途やエリアであることから、企業の土地投資計画が堅調な状況を勘案すると、次回以降の推計で、地価の上昇基調が足元でも維持されていたと確認される可能性も低くない。商業地やプライム住宅地の実勢地価が調整局面に入ったと現時点で評価するのは尚早であろう。
  • ただし、2014年4月の消費増税後にみられる経済活動の反動減や消費マインドの低下、プライム住宅地における家賃負担力の高い欧米系を中心とする外国人の減少傾向など、商業地やプライム住宅地における地価の調整リスクを疑う材料も少なくない。推計された地価上昇の一服が一時的な踊り場にすぎないのか、あるいは調整局面の入口を表すものなのか、先行きの地価動向を注視する必要性が高まっている。

東京23区の取引実勢地価と鑑定評価(左:住宅地、右:商業地)

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