時限的な減税政策は住宅需要を呼び戻せるのか?
-英国の事例より-

海外市場調査部 副主任研究員   深井 宏昭

要約・概要

  • 英国では2020年7月から、Stamp Duty Land Tax (SDLT) の時限的な減税措置(2021年3月末まで)が実施されている。過去に例を見ない大規模な減税規模となっており、足元では早々に住宅需要の回復基調が見られている。
  • 2008年の世界金融危機の際に同様に実施された時限的なSDLT減税措置のインパクトを定量的に分析した結果、減税政策の導入と住宅需要の増加には統計的に有意な正の相関が見られなかった。これは、2008年における減税規模がきわめて限定的であったことなどが影響していると見られる。
  • 今回の減税規模は2008年を大きく上回る規模で実施されていることから、住宅需要に与える効果は大きく顕在化することが見込まれる。しかし、時限的な減税効果は将来の需要を前倒しで消化し、中長期的な住宅需要の低迷を引き起こす可能性があり、住宅市場活性化のための第二、第三の矢が放たれることに期待が集まる。
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