成果連動型民間委託契約方式(PFS)とアウトカムズファンド

PPP・インフラ投資調査部 副主任研究員   井口 邦洋

要約・概要

  • 本レポートでは、官民連携の新たな手法として注目され、今後、国内での導入拡大が見込まれる「成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)」の仕組みや先行事例、今後の展望などについて考察した。
  • PFSとは、地方公共団体等から民間事業者への報酬の支払いが成果指標の改善状況に連動して行われる仕組みを指す。「成果連動型支払い」という特性上、民間事業者の創意工夫による成果創出の余地が大きく、成果の客観的評価が可能な分野(医療・健康、介護、再犯防止等)において、活用の期待がとりわけ大きい。
  • PFS(SIB)の活用は、地方公共団体等にとっては、行政課題解決への民間ノウハウの活用促進や費用対効果の向上などの効果が期待され、民間事業者にとっては、公共サービスへの参入機会の増大や成果に基づく適切な対価の受け取りなどのメリットがあると考えられる。
  • 日本では2015年頃より実験的な取り組みが開始され、2021年1月現在、計34件のPFS事業が実施済み、もしくは実施中となっている。日本のPFSは「創生期から発展期への移行段階」にあると言え、事業の仕組みや参加するプレーヤーが多様化してきている点も注目される。政府は2020年3月に策定した「成果連動型民間委託契約方式の推進に関するアクションプラン」(PFSアクションプラン)において、「重点3分野(医療・健康、介護、再犯防止)でPFS事業を実施した地方公共団体等の数を、2023年3月末までに100団体以上とする」ことを目標化している。
  • PFS(SIB)の先進地である英国と米国には共通して、アウトカムズファンド(Outcomes Fund)と呼ばれる、PFS(SIB)発展の一因となった補助制度が存在する。アウトカムズファンドとは、複数のPFS(SIB)事業に資金を提供できるよう、政府等によって設立された基金を指す。日本政府も、PFSアクションプランにおいて、今後の具体的取組として「PFSの補助制度の検討」を掲げているが、その重要性と効果を鑑みると、「検討」に留まらない早期の「設立」が望まれる。

(本レポートは、一般社団法人不動産証券化協会「ARES不動産証券化ジャーナルVol.57」掲載論文を基に、加筆・修正したものである。)

PPP・インフラ投資調査部 副主任研究員 
井口 邦洋

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