不動産市場・ショートレポート(8回シリーズ)
コロナ禍で不動産市場は何が変わったか②/賃貸市場(オフィス)
 テレワークによるオフィス削減等によりオフィス市場は悪化へ

投資調査第2部 研究員   岩下 奈菜

新型コロナの影響により、テナントの動きが停滞し、オフィス市場は約10年ぶりに悪化に転じた

 2010年前後から好調に推移してきたオフィス市場は、新型コロナの影響により、全国的に悪化に転じた。低下トレンドにあった空室率は既に上昇に転じ、賃料は弱含んでいる。
 空室状況を詳しくみると、2020年の空室率の上昇幅は、主要都市の中で東京都心5区が最も大きい。コロナ前から予定していた新築大型ビルへの移転で生じた既存ビルの空室に、新たなテナントを誘致できない状態が長期化するなど、テナントの動きが停滞したことが要因である。

2021年以降、テレワークによるオフィス床削減が本格化、空室率は上昇を続ける見込み

① 東京都心5区
 オフィス需要(企業が利用するオフィス面積)は、「オフィスワーカー数」と「オフィスワーカー1人あたり面積」の掛け算で把握できる。オフィスワーカー数は、2021年以降、景気回復に伴い東京を含め全国で増加する見通しだ。一部の企業が地方への本社移転を発表しているが、顧客との円滑な取引や従業員確保の問題などから、その数は多くない。国土交通省が2020年8~9月に都内の上場企業を対象に実施した調査では、本社事業所の縮小・移転を検討する企業は全体の26%で、その移転候補地(複数回答)は23区が73%と断トツであり、1都3県(神奈川、千葉、埼玉)以外を検討する企業は僅か10%未満であった。また、過去の都心5区への上場企業本社の転出、転入の動きを見ると、景気悪化局面では、賃料負担削減等を目的に5区外への転出が増えるが、景気回復局面では5区内への転入が増える。コロナ収束後には、企業はより広範な地域から雇用を確保しやすい都心5区での本社立地を志向すると見ている。
 しかし、オフィス需要を構成するもう一つの要素「オフィスワーカー1人あたり面積」は、テレワークの普及により縮小すると見ている。各種アンケート調査の結果によると、東京23区では、Afterコロナでの出社率はWithコロナ時よりも高くなるものの7~8割程度に留まり、元の高い水準に戻るわけではなさそうである。そしてこのようなAfterコロナの出社率を前提に、東京23区に本社が立地する大企業は、従業員あたりのデスク数を平均で約12%削減する意向である。
 これらを踏まえると、2021年以降、オフィス需要は増加するものの、力強さを欠くと予想される。加えて、2023年と25年には大量供給を控えている。そのため、空室率は、2021年以降も中期的に上昇トレンドを続ける見込みである。

② その他の主要都市 (大阪・名古屋・札幌・仙台・横浜・福岡)
 その他の主要都市でも空室率は上昇トレンドとなるが、空室率の上昇幅は多くの都市で都心5区よりも小幅と予想している。テレワークによる需要へのマイナス影響が東京よりも小さいことや、新規供給が東京よりも少ないためである。テレワークの影響はコロナ感染収束で変化する可能性があり、今後も注目される。

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