不動産市場・ショートレポート(8回シリーズ)
コロナ禍で不動産市場は何が変わったか①/新型コロナウイルスの影響

投資調査第2部長 研究主幹    坂本 雅昭

新型コロナウイルスが不動産市場に与える影響は、不動産タイプにより大きく異なる。

 新型コロナは、不動産の利用者である企業や個人の志向・行動を変えることを通じて、不動産市場に影響を与える。影響は不動産タイプにより大きく異なる。比較的強いマイナスの影響を受けるのはホテルである。短期的にインバウンド需要が失われ、日本人観光需要が弱まるだけでなく、中期的にもオンライン会議の普及で出張需要が低迷するとみられる。都心型の商業施設もホテルと似た影響を受けるほか、オフィス出社の減少による立寄消費の減少が懸念される。郊外型の商業施設は、短期的には都心型ほどの影響は受けないが、中期的なEC市場拡大の影響は都心型よりも大きいとみられる。逆に、プラスの影響を受けるタイプもあり、物流施設が挙げられる。コロナ前からEC市場の拡大を追い風に施設需要が伸びていたが、コロナでその傾向は一層強まる。住宅も個人の滞在時間が長くなる点でマイナスの影響は小さい。しかし足元で、東京では地方からの人口流入が弱まり、加えて東京周辺部への人口流出が強まっている。コロナ収束後には落ち着くものの、かつてのような強い人口動態には戻らない可能性がある。不透明感が最も強いのがオフィス。当初、影響は大きくないと思われたが、コロナ収束後の出社率が低水準に留まり、企業によるオフィス床の削減が進む可能性が高まってきた。不動産投資では、これら影響の差異を踏まえて検討することが重要である。

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