不動産市場・ショートレポート(8回シリーズ)
アフターコロナでの新しい不動産市場②/賃貸市場(オフィス)

投資調査第2部長 研究主幹    坂本 雅昭

テレワークによる需要の伸び悩みとともに、大量供給も懸念材料。

 テレワークの普及はコロナ禍前より進んでいたが、利用できる社員は子育てや介護等の家庭事情のある社員がほとんどであったため、普及ペースは緩やかであった。ところが、コロナ禍を契機に、テレワークは一般的なワークスタイルとして一気に普及した。コロナ禍が収束しても、テレワークは一定程度定着するとみられ、一時的な変化ではなく構造変化と言えるであろう。テレワークは、足元だけでなく、今後のオフィス需要の伸び悩みにつながる懸念材料である。

 こうしたオフィス需要の変化は、賃貸オフィス市場における需給バランスの悪化要因となるが、一方の供給動向はどのような状況だろうか。東京都心5区の供給動向を見てみると、過去の大量供給は、「2003年」、「2007年」、「2012年」と概ね4~5年に1度のペースで生じていた。しかし、2016~20年にかけては2年に1度のペースで大量供給となっており、今後も同様の動向が続く見込みである。特に2025年は、過去最大となった2003年に匹敵する供給量となる見込みであり、加えて、これらに含まれない東京周辺区でも大量供給が予定されている。

 このように大量供給が続く背景の一つとして、国家戦略特区が挙げられる。国家戦略特区は、アベノミクスの成長戦略の1つで、「世界で一番ビジネスがしやすい環境」を作ることを目的に、大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度である。この国家戦略特区の特例措置の一つに、容積率・用途等の土地利用規制の見直しがある。国家戦略特区は安倍政権の後も継続している。当社調べでは、東京都心5区の2021~29年の新規供給量の約6割が国家戦略特区の区域における供給である。

 東京では、2022年には雇用の回復によりオフィス需要は増加に転じる見通しである。しかし、中期的には、テレワークの普及による出社率の低下に加えて、女性や高齢者の労働参加が限界に近づくことで、オフィスワーカーの増加ペースは鈍化し、オフィス需要の増加ペースも弱まってくる。そのような需要動向の中で、これまでのように大量供給が続けば、需給バランスは好転しにくい。需要動向だけでなく、今後の供給動向にも注目が必要である。

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