破堤確率を導入して物理リスクの精緻化を試みる
要約・概要
浸水に関するリスク評価は、国土交通省ほか各自治体発表の洪水浸水想定区域図(洪水ハザードマップ)からその地域の最大想定浸水深を読み取り、さらに国土交通省水管理・国土保全局「治水経済調査マニュアル(案)」記載の浸水深別被害率を用いることにより、地盤勾配を考慮した資産価値毀損額の算定が可能である。ただし、この「治水経済調査マニュアル(案)」では破堤確率を考慮せず、河川水位が計画高水位に達すると堤防はすべて破堤すると想定して「被害最大」となる破堤地点を選定している。すなわち浸水想定区域図では、各計算メッシュにおいて氾濫想定地点ごとに計算した浸水深のうち、最大値を地図上に表現している。しかし実際には、計画高水位に達しても破堤しない場合もあり、浸水リスクが過大評価となる可能性が指摘される。リスクの発生は確率的であり、浸水リスクは降雨形態、洪水の発生状況、洪水時の堤内地の地形や地盤状態、さらには立地や建物構造の状態などの種々の条件に左右される確率事象である。すべての影響因子を考慮することは叶わないが、少なくとも浸水リスクを確率事象として捉え、その発生を確率によって定量化する必要がある。
(一般社団法人不動産証券化協会「ARES不動産証券化ジャーナル78号」に掲載)
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