インド:ベンガルールのオフィス市場
―米国ビザ政策で加速する「アウトソーシング受託拠点」から「イノベーション拠点」への転換―

海外市場調査部 副主任研究員   河原 和人

要約・概要

  • インドIT産業の中心地であるベンガル―ルのオフィス需要は、米国向けのITアウトソーシング受託ビジネスに牽引されて成長してきた。そのため、米国のIT産業との関係性は深く、米国の景気変動や政策変更の影響を受けやすいという特徴を有している。
  • 過去のオフィス賃貸需要を見ると、トランプ第一次政権(2017-2021年)によるH-1Bビザ審査厳格化の影響を受けた2018年、そして米国の大手IT企業がパンデミック特需の反動減を受け、過去最大規模の人員削減を実施した2023年に新規需要の落ち込みが見られる。
  • 2025年9月、トランプ第二次政権はH-1Bビザの新規申請に対して、1件当たり10万米ドルの高額手数料を課した。今回のビザ政策も、短期的にはITアウトソーシング受託企業の採用抑制やプロジェクト縮小を通じて、ベンガル―ルにおけるオフィス需要を下押しすると見られる。
  • ただし、ベンガル―ルは単なる米国の「アウトソーシング受託拠点」からITを活用した世界的な「イノベーション拠点」へと構造転換しつつある。今回のビザ政策は、インド国内の業務機能拡大・高度化を加速させ、中長期的に見れば、ベンガル―ルのオフィス需要の更なる成長を後押しするだろう。

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河原 和人

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