太陽は死んだか?

投資調査第1部 上席主任研究員   福島 隆則

 「行き過ぎた状況」を「バブル」と称するなら、2012年頃から今に至る太陽光発電の急激な拡大は、やはり「太陽光バブル」と言っていいだろう。そして、「行き過ぎた状況」は、いつか修正されるのが世の常でもある。すなわち、「バブル」はいつかはじける。とすると、「太陽光バブル」もいつかははじける運命なのだが、もしかすると、それが今なのかもしれない。

 我が国に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT:Feed-in-Tariff)が導入された2012年7月以降、当初の想定をはるかに超える勢いで増えていった太陽光発電であるが、太陽を利用するが故の発電量の不安定さが、送電網の安定性に重大な懸念を生じさせるとの理由で、昨年9月以来、九州電力など5つの電力会社が、新規の買取手続を保留していたのは記憶に新しいだろう。こうした事態に対応するため、先頃、経済産業省は、固定価格買取制度の運用を見直した。そして、この新しいルールに組み込まれたのが、制限も補償もなく電力会社が事業者に対し出力抑制できるという制度であり、今後は、その要請に応じる事業者だけが、申込を受け入れてもらえることとなった。

 この“踏み絵”にも似た制度は、当然に、事業者の評判がすこぶる悪い。無制限・無補償の出力抑制をのまざるを得ないとすると、キャッシュフローが読めなくなることから、事業性の評価ができず、ビジネスとして成立しにくくなるためである。かつては、LTV(Loan-to-Value)で7~8割は当たり前という気前良い資金供給で、「太陽光バブル」の一端を担ってきた金融機関も、これでは手が出ないだろう。また、新しい代替投資の対象として、太陽光発電に熱い視線を送ってきた投資家にとっても、この新しい制度は悪い知らせとなった。その誕生・発展に向け、議論が熱を帯びてきた我が国のインフラ投資市場にとっても、冷や水を浴びせられた格好である。こうしたことから、「もう太陽(光)は死んだな」とつぶやく関係者も少なくない。

 確かに、現状のままでは、太陽光発電の新設は難しくなるだろう。しかし、幸いなことに、無制限、無補償の出力抑制を行うのは、全ての電力会社ではない。東京電力や関西電力など、皮肉にも、これまで適当な土地がなかったことで太陽光発電の普及が進んでこなかった地域の電力会社では、“踏み絵”を踏まずとも買取を受け入れてもらえる。

 となると、あとは考え方次第である。例えば、こうした都会の地域では、広い土地がない代わりに多くの建物がある。すなわち、屋上を利用した太陽光発電事業は可能だ。また、今後の技術革新で、置き場所を選ばない(例えば宇宙空間など)太陽光発電ができるようになるかもしれない(既に水上の太陽光発電は実用化されている)。そうこうしているうちに、電力会社の受け入れ体制が増強されるかもしれず、そうなれば、この無制限・無補償の出力抑制も解除されることだろう。更には、地熱やバイオマスなど、準備段階にやや時間のかかる、その他の再生可能エネルギーの事業化も進むかもしれない。

 このように考えると、我が国の再生可能エネルギーは、一時的に停滞することはあっても、長期的な発展のトレンドに変わりはないと言える。願わくは、この停滞の間に、制度的な課題は全て出し切ってもらいたい。日本はこの分野では後発なのだから、ドイツなど先発国にいくらでも学べるはずである。幸い、先日から始まった、最適な電源構成(ベストミックス)を巡る政府の検討においても、再生可能エネルギーの推進をやめるなどという議論は聞こえてこない。「太陽は死んだ」のではなく、再び「昇る」ために一旦「沈んだ」だけである・・・と願いたい。

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