自然空室率とゾンビオフィスの関係
 ~近年の自然空室率の低下は、ゾンビオフィスの復活を示唆している~

投資調査第2部 副主任研究員 竹本 遼太

<要約・概要>

  • 本稿では、オフィス賃料が反転する目安となる空室率の水準である“自然空室率”を定量的に説明する一つのロジックとして、 “ゾンビオフィス”の影響に着目した。
  • ゾンビオフィスとは、「賃料に関わらずテナントが移転先候補として検討せず、オフィス市場全体の需給バランスに影響しない、競争力を失った賃貸オフィス」として定義できる。ゾンビオフィスの割合が多い市場ほど、自然空室率が高い(実際の空室率が高くても賃料が上昇しやすい)と考えられる。
  • 各都市の業務・商業中心部のエリアでは自然空室率が低い傾向にあるが、来店型のテナントも含めてオフィス需要層に厚みがあることで、多少競争力の低いビルでもゾンビオフィス化しにくいものと推察される。
  • 近年は、①築古ビルの取壊し・建替えの進行、②(特に地方都市における)新築ビルの供給抑制、③景気改善を受けたオフィス需要の拡大、といった要因が重なる中で、オフィス需給の引き締まりに伴うゾンビオフィスの復活も増えており、結果として自然空室率の押し下げに寄与しているものと考えられる。

ゾンビオフィスの多寡と自然空室率の関係(上:自然空室率が低い市場、下:自然空室率が高い市場)

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