英国における蓄電池電力貯蔵システムへの上場投資ファンドの動向
~日本での普及へ期待される電力取引市場・証券市場の環境整備~

PPP・インフラ投資調査部 上席主任研究員   浅川 博人

要約・概要

  • 脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーのさらなる普及が期待されている。再生可能エネルギーの課題の一つに、天候等によって発電量が左右されるため電力需給の調整が困難となる「変動性」の問題がある。この問題を解決する手法の一つに、電力貯蔵システム(Energy Storage System:ESS)が挙げられる。なかでも、蓄電池電力貯蔵システム(Battery Energy Storage System:BESS)は、徐々に技術的な課題が克服され、実装段階を迎えている。
  • 全世界のESSのうちBESSが占める比率は約2%だが、英国の同比率は約22%であり、突出してBESSの普及が進んでいる。その背景の一つに、BESSの新設をファイナンス面から支えるための環境整備が挙げられる。英国の電力取引市場では、BESSの特徴を活かす市場の開設や、BESSを含む新設の発電設備に対する最長15年間の長い契約期間の設定など、BESSの新規開発を促進する制度設計がなされている。こうした背景もあり、ロンドン証券取引所では2018年よりBESS投資専門のインフラファンドが上場しており、事業者が開発したBESSの着工または完工後の受け皿として機能している。
  • 今後日本で脱炭素化を進めるにあたり、BESS普及の必要性について、エネルギー分野での議論が進められると思われる。もし変動性を克服する手段の一つとしてBESSの本格的な普及が必要であれば、電力取引市場においてBESSの新設を促す制度設計や、証券市場でBESSを投信法上の特定資産として位置づけること等の環境整備も検討に値する。

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