投資家アンケートからみた危機下での期待利回りの決定要因

投資調査第2部 副主任研究員   荻島 駿

要約・概要

  • 新型コロナウイルス感染症の流行以降、実体経済は一時的に大きく落込んだものの、不動産期待利回りへの影響は限定的であった。そうした中で、「仮にどういった局面になれば期待利回りが上昇するのか」は重要なテーマと考えられる。
  • そこで本稿では、昨年6月に約240名の企業・個人を対象に行った弊社アンケート調査をもとに、どういった投資家等が新型コロナ流行直後に期待利回りの上昇を見込んだかを分析した。
  • 分析結果として、主に以下の点が得られた。
     1). 運用会社等の不動産投資に詳しい投資家ほど、期待利回りの上昇を見込まない傾向にある。
     2). 経済・金融市場の悪化見込みは期待利回りの上昇に繋がる傾向にある。
     3). 不動産キャッシュフローや資金調達環境の悪化見込みは期待利回りに影響しない一方で、私募ファンド破綻等を危惧する投資家は期待利回りの上昇を見込む傾向にある。
  • これらの点から、「仮にキャッシュフローや資金環境が短期的に悪化しても、マクロでの経済・金融環境が安定し、ファンド倒産リスク等がない状況であれば、期待利回りには影響しない」と投資家等は考えていること等が示唆された。

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