不動産市場・ショートレポート 賃貸市場(オフィス)
主要7都市における賃貸オフィスビルの供給見通し

投資調査第2部 主任研究員   川村 康人

東京都心5区の賃貸オフィス市場では国家戦略特区の活用により
断続的な大量供給が続く見通し

 各開発計画の公表情報をもとに今後のオフィス供給を集計すると、2023~2030年の8年間では、160万坪を超える賃貸オフィス床が供給される見通しである。これらのうち、約6割の開発が国家戦略特区の指定を受けているため、賃貸市況の悪化や建築費の高騰が継続したとしても、各開発事業者の単独の判断による供給計画の中止・大幅変更は容易ではないと考えられる。今後、特区の活用により、リニア中央新幹線や羽田空港アクセス線などの大型インフラ開発と合わせて、東京駅~品川駅間を中心に大型の供給が続く見通しである。

札幌や福岡でも行政による築古ビルの建替え誘導策により
賃貸オフィスビルの大量供給が続く見通し

 東京以外の主要都市では、札幌では「都心における開発誘導方針」による容積緩和策等を受けて、北海道新幹線延伸や札幌五輪招致を見据えて、2030年頃まで札幌駅前通・大通公園エリアを中心に複数の大規模再開発が予定されている。過去20年間では総じて供給抑制であったため、将来8年間では供給面積が年平均で約2.7倍に増加する見通しである。
 福岡では、天神ビッグバンや博多コネクティッドの活用により、築古ビルの建替えや一体開発が多数計画されている。将来8年間では過去20年間と比較して、供給面積が年平均で約1.6倍に増加し、直近のストックに対する供給インパクトは15%超と、主要7都市の中で3番目に大きくなる見通しである。

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