不動産市場・ショートレポート 不動産投資市場
国内の不動産投資市場を取り巻く環境変化とその影響

投資調査第1部 主任研究員 田中 可久

国内不動産投資需要への影響として、インフレからはマイナス、円安・海外金利上昇からはプラスが想定される

【為替の影響と見通し】
  2021年初以降、長らく緩やかな円安傾向が続いていたが、2022年3月以降は1ドル110円台半ばから10月には150円を超えるまで急激な円安が進んだ。11月以降は、米国の物価上昇鈍化や日銀の金融政策変更を受けて過度な円安は修正されたが、引き続き130円前後で推移している。今後、長期的には内外金利差が縮小していく過程で、2021年初頃の為替水準への円高回帰が見込まれる。

【物価上昇(インフレ)の影響と見通し】
 物価に関しては、2021年以降、国内外で物価上昇(インフレ)が高進し、一部では経済減速につながる懸念が継続している。今後、物価上昇率は鈍化する見込みだが、当面は高水準での推移が見込まれる。
 インフレ下の不動産投資では賃料上昇が期待されるため、インフレは投資需要を増加させる要因となりうる。一方で不動産運営や開発のコストも上昇することとなり、賃料の上昇をコストの上昇が上回れば、キャッシュフロー減少につながり、投資需要が減退する要因となる。

【海外金利上昇の影響と見通し】
 海外金利の上昇は、2022年初から10月にかけて海外の株式・債券等の資産価格の大幅下落を誘発しており、国内株式でも相応の下落が見られた。その一方で、足元まで海外不動産の期待利回り上昇や価格下落は限定的で、国内不動産では期待利回り上昇や価格下落は見られない。結果として、投資全体における不動産投資割合が目標よりも高くなっている状況にあり、今後、後述するようなデノミネーターエフェクト(資産価値の大幅な変動に伴う特定資産のリバランス)が生じる可能性がある。また、デノミネーターエフェクトによる投資需要減退以外でも、英国の年金基金等で一時的に流動性(手元資金等)を確保する必要性から、不動産ファンド持分を売却する動きもあり、以前よりも不動産投資に慎重な海外投資家が増えている。

関連レポート・コラム

関連する分野・テーマをもっと読む