Bリーグと“体育館”コンセッション

投資調査第1部 主席研究員   福島 隆則

 「実は、学生時代バスケ部だったんですよ」―― 最近、周りでこういう話を聞く機会が増えてきた気がする。これも、バスケットボールの新しいプロリーグ(Bリーグ)が始まった効果だとすれば、リーグの“開幕ダッシュ”としては大成功ではないだろうか。私も何試合か観戦させてもらったが、室内ならではの自由な演出も魅力で、可能性のあるコンテンツだと感じた。Jリーグの初代チェアマンだった川淵三郎氏が改革の指揮を執ったことや、ソフトバンクによる大型スポンサー契約、世界初の全面LEDコートなど、これまでも話題性はあったが、今後はリーグの持続的な成長に寄与する戦略やアイデアが重要となるだろう。

 そんなBリーグの開幕に合わせるように、横浜では「スタジアム&アリーナ2016」というイベントが開かれていた。スポーツ施設ビジネスの世界的イベントで、日本では初開催となる。スポーツ施設を“ハコモノ”と考えてきた日本人にとって、当然のように“プロフィットセンター”と言い切る海外ゲストの話は、カルチャーショックですらあった。“体育館”ではなく“アリーナ”と言われるゆえんだ。折しも、内閣府が今年5月に発表した「PPP/PFI推進アクションプラン」には、スポーツ施設にもコンセッション方式を活用して民間運営を促す目標が掲げられている。民間運営となると、施設全体の稼働率を上げる工夫や、より多くの人により長く滞在してもらって、より多くのお金を落としてもらう仕掛けなど、ビジネスとしての発想が重要となる。

 Bリーグにも期待はするものの、アリーナ運営の立場から見れば1コンテンツに過ぎない。現状でホームアリーナを使うのは年間30日ほど。それ以外は、ほかの競技やコンサート、イベントなどで埋める必要がある。そうなると汎用性を持たせるため、観客席は固定席ではなく可動席。床も木床ではなくイベント内容に応じた置き床とするなど、施設の作り方にも従来と異なる発想が必要となる。

 また、コーポレートルームやVIPルーム、飲食スペースの充実など、アリーナ内の収益性を高める仕組みや、付随施設で収益を上げる仕組みも重要になるだろう。海外には、スポーツ施設にホテルやショッピングセンター、高齢者住宅が併設された例まであるそうだ。

 さらに視野を広げると、アリーナを中心としたまちづくりも考えられる。日本にも、さいたまスーパーアリーナを擁するさいたま新都心の例がある。アリーナは集客施設であるとともに、非常時には避難場所にもなり得るため、まちづくりの核としてのポテンシャルは高い。

 Bリーグにも注目すべき取組がある。渋谷区をホームタウンとするサンロッカーズ渋谷というチームは、ホームアリーナを区内にある青山学院大学の体育館とした。文教施設である大学の体育館を商業利用することに多くの課題もあったはずだが、渋谷区が積極的に協力する形で解決した。渋谷区がバスケットボールを中心としたスポーツ振興を、まちづくりのテーマと考えたためだ。文字通りの産官学連携である。

 一方で、地元のBリーグチームのホームアリーナを見据えて、“体育館”の再整備を検討する自治体も出てきた。こうした中からコンセッション方式を活用する例が出てくるかもしれないし、将来的に“体育館投資ファンド”のようなものも出てくるかもしれない。こうしたアリーナ整備や地域に密着したチーム作りは、Bリーグのミッションにも沿っている。

 どこまでも夢の広がるバスケットボールとアリーナの未来は、学生時代ハンドボール部だった筆者にとってジェラシーですらある。

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【インフラ投資市場UPDATES】 コンセッション方式を活用した空港事業の民営化 Ver.001 (2016年8月19日)

公共施設への民間活力導入について③ ~スポーツ施設の現状と官民連携手法のあり方~ (2016年9月16日)

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