不動産市場・ショートレポート(7回シリーズ)
コロナ禍収束に向けた不動産市場の動き④/賃貸市場(物流施設)

投資調査第1部 主任研究員   上田 紘平

コロナ禍収束以降も、旺盛なEC需要等を背景に、地方圏でも大型賃貸施設の供給拡大を見込む。

 コロナ禍以降、消費者の購買行動のEC(Electronic Commerce:電子商取引)シフトが不可逆的に加速したことで、Amazonや楽天などのECプラットフォーマーを中心に、EC貨物に適した大型賃貸施設が求められている。ECプラットフォーマーなどは、成長スピードに合わせた物流網を構築するために、用地確保などで時間を要する自社物流施設の開発よりも、大型賃貸施設を活用することが一般的になっている。
 そのような中、ECプラットフォーマーや全国展開する小売・メーカー・陸運業者等のテナント・荷主は、特に今後の労働時間規制等による深刻なドライバー不足による輸配送力の低下を懸念し、「ドライバー負荷が少なく、なるべく長距離輸送をしない物流網」の構築を模索している。具体的には、東京圏内だけでなく、地方圏など新規エリアでの物流拠点開発を進め、全国規模で物流拠点・ネットワークの再構築を進めている。
 こうした動きを受け、大型賃貸施設が従来集積する東京圏や大阪圏だけでなく、名古屋圏や福岡圏などの地方圏でも、物流拠点としてのエリアポテンシャルが高まりつつある。各都市の全物流施設ストックに占める大型賃貸施設の割合は、東京圏の22%、大阪圏の13%に対して、名古屋圏、福岡圏はそれぞれ2%、5%と低く、地方圏では物流施設の中でも特に大型賃貸施設のストックが遅れている。また、名古屋圏と福岡圏の大型賃貸施設ストックの大きさを、当該4大都市圏の合計額に対する割合で見ると、それぞれ4%、3%であり、同様の割合で見た人口・経済(GRP)・産業(製造品出荷額)の大きさとの対比でも低位に留まっている。こうした状況からも、今後の地方圏における供給拡大の余地は大きい。
 今後は、コロナ禍以降の旺盛なEC需要等に加え、上述の地方圏でのエリアポテンシャルが高まることによって、東京圏や大阪圏に加え、地方圏においても、大型賃貸施設の供給拡大を見込む。

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