不動産市場・ショートレポート(7回シリーズ)
コロナ禍収束に向けた不動産市場の動き②/賃貸市場(住宅)

投資調査第1部長 研究主幹    馬場 高志

東京23区の人口移動が大きく変容:雇用悪化による地方からの流入減+テレワークで郊外へ流出増

 既にコロナ禍は1年超と長丁場に入っているが、その影響は保健医療分野を越え、我々の住まい方にも影響を及ぼしており、不動産市場への影響も懸念されている。そこで本稿では、若年層による人口の大移動期とも言える2021年3月を含む、実質的にコロナ禍に突入した2020年4月以降(=2020年度)のデータを用いて人口移動の実態を捉え、住まい方の変化を確認した。なお分析に当たっては、転入超過率=(転入数-転出数)/人口、およびその変化(前年同期差)を用いた。
 東京23区の2020年度の転入超過率は-0.1%となり、特に2019年度の+0.7%からは-0.8%PTと大幅に低下し、わずかではあるが転出超過に転じた。またこの-0.8%PTに占める、対首都圏(1都3県)の寄与度は-0.4%PT、対地方圏(首都圏以外)も同じく-0.4%PTで、①テレワークの普及に伴う住まいの郊外化(対首都圏)、②雇用悪化に伴う新規就業者の減少や失業者の帰郷等の増加(対地方圏)、の各要因で二分する結果となった。雇用悪化により、東京23区など大都市への人口流入が縮小することは過去にも観察されていたが、コロナ禍はこうした事態に加え、長距離通勤が常態化する首都圏の就業者にテレワークの利用を促し、さらにそのメリットを享受すべく新たに都心部から郊外部への転居を促した。コロナ禍は、人々の住まい方を変容させたという意味において、2011年の東日本大震災以降、首都圏で多くの就業者が帰宅困難となった経験から職住近接志向が強まり、結果として大都市(主に東京23区)への人口流入が加速した動きに対し、一石を投じる事態とも言えよう。
 さらに興味深いのは、こうした人口移動の大幅な変容が東京23区に限られることである。地方都市では、雇用悪化に伴い東京23区など首都圏への人口流出が減少する一方で、地方圏や地域ブロック内からの人口流入も減少し、加えて郊外部への転居は大阪・名古屋などでわずかに認められる程度である。そしてこれら変化が相殺しあった結果、全体の人口移動(=転入超過率)の変化は小幅に留まった。
 今後の人口移動については、上述の通り2010年代を通じて職住近接志向が進んだのと同様に、しばらくは郊外化の動きが継続するであろう(実際、東京23区では4月以降は月次ベースで転出超過)。転出入者の主要な受け皿となる賃貸マンション市場でも、稼働率や賃料の変化には引き続き注視する必要があろう。

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