不動産市場・ショートレポート(7回シリーズ)
コロナ禍収束に向けた不動産市場の動き⑤/賃貸市場(ホテル)

投資調査第1部長 研究主幹    馬場 高志

海外でも繰り延べ需要が蓄積する中、清潔さと治安の良さ等から訪日意欲はますます高まっている

 コロナ禍で外国人の入国規制が続き、インバウンド需要に支えられてきた国内のホテル市場は、大きな打撃を受けている。市場の将来予測を行う当社には、ホテル用不動産のオーナーや投資家から、「インバウンド需要はコロナ禍収束後に本当に回復するのか」といった嘆きともとれる問い合わせが相次いでいる。その点、当社発行の不動産マーケットリサーチレポート・不動産賃貸市場(ホテル編)の最新版では、「今後は、繰り延べ需要の顕在化を背景に、2021年後半からの日本人需要の回復に加えて、2022年以降は外国人需要の回復がホテル需要を牽引し、ホテル延べ宿泊者数は、2023年に2019年水準を回復、2024年には同水準を超える」と予測している。本稿では、こうした見方の背景を一部ご紹介する。
 コロナ禍も終盤を迎える中で、いわゆる「ペントアップ需要(物品購入やサービスの利用を控えていた消費者が、景気回復期に入って一気に需要を満たそうとする行動やその結果)」が相当に蓄積している。今後は、その顕在化を待つことになる。足元、日本人のペントアップ需要は、海外旅行から国内旅行へのシフトが見られ(2021/3/2公表レポート参照)、外国人のペントアップ需要も同様の傾向は伺われる。
 そうした中でも、外国人を対象とした今後の海外旅行意向に関する調査結果において、訪日ニーズは大きく高まっており、アジア居住者、欧米豪居住者の何れでも旅行先の国・地域として日本が首位である。2020年6月と同年12月の調査結果を比較すると、コロナ禍を通じ訪日意欲は一層高まっていると言える。コロナ禍を経験し、他国に比べた日本の清潔さと治安の良さなどの要素がより高く評価されている。訪問先では、東京や富士山、京都や大阪が広く支持を集めているが、特にリピーター客の多いアジアからの旅行者には、北海道・名古屋・福岡・沖縄など地方都市も人気であり、各地域の個性豊かな食事や買い物を楽しむ需要が見て取れる。訪日旅行にかける予算は以前より積み増す意向もあり、訪日客による日本国内での消費(インバウンド消費)は、訪日客数の回復以上に期待ができそうである。
 既に余力のあるオペレーターは、こうしたコロナ禍収束後を見据えた新たな事業展開を模索しており、ホテル市場が再び活気を取り戻す日も近いと見ている。

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