不動産市場・ショートレポート(7回シリーズ)
コロナ禍収束に向けた不動産市場の動き⑦/不動産の資産価値

投資調査第1部長 研究主幹    馬場 高志

軟調な賃貸市場を受け資産価値は横ばいから下落基調も、投資家は従来からの投資姿勢を堅持

 ここではコロナ禍における不動産の資産価値の推移について、キャッシュフロー(CF)要因とキャップレート(cap)要因に分けて、価格変化の背景を確認する。資産価値の分析には、当社推計の収益還元価値(=(賃貸収入-賃貸費用)/期待利回り)を使用し、推計では賃貸市場の新規成約賃料・継続賃料・稼働率等をもとに一定のテナント入替および賃貸費用を仮定している。また、分析対象は、市場規模が最も大きく投資の検討余地が大きい東京エリアの主要5タイプを取り上げた。
 まず2020年10月から2021年4月までの資産価値の動きに着目すると、特にテレワークの普及を受け、賃貸スペースの解約が顕在化しつつあるオフィスタイプの資産価値が下落に転じている。コロナ禍で、契約更新に当たり退出またはスペースを縮小するテナントが発生し、その後のリーシングも芳しくなく新規成約賃料も軟調となった結果、CFがマイナスに転じたことが資産価値下落の主要因となっている。ただし同期間においてキャップレートの上昇は観測されておらず、賃貸市場は弱含むものの投資家の投資姿勢には大きな変化は見られず安定している。こうした状況は、CFへの影響が小さい住宅タイプ、CFの回復が道半ばの都心商業、CFが大幅下落を続けるホテルタイプにおいても共通している。唯一異なるのはEC市場の拡大を期待して資金流入が続く物流タイプであり、CFが限定的ながら上昇し、投資家の強気姿勢を反映してキャップレートが低下し、資産価値の上昇が続いている。
 このような資産価値の変化や投資家動向の背景には以下のような投資判断が想起される。すなわち世界金融危機の時と異なり、コロナ禍による資金調達環境への影響は限定的であるため、投資資金は引き続き潤沢で投資意欲は旺盛である。ただし、賃貸市場が少なからず悪影響を受ける中では、投資家は、よりCFへの影響が小さい物件や今後の成長が見込める物件等を見定め、割安な投資機会を狙っていると言えよう。
 今後の資産価値の方向性は不透明な部分が多いものの、足元での投資家行動から察するに、コロナ禍収束まで(国内では2021年中を想定)は最大でもCFと同程度の下落率に留まるであろう。さらにコロナ禍収束後は、CFの成長性を見極めつつも、概ねCFを上回る上昇率が予想される。

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