不動産市場・ショートレポート(7回シリーズ)
コロナ禍収束に向けた不動産市場の動き⑥/投資市場

投資調査第1部 主任研究員   田中 可久

低金利環境下での運用難が不動産投資需要を下支えしており、今後も投資需要は維持される見込み

 コロナ禍でオフィス等の不動産賃貸市場が悪化しているが、直近まで不動産投資需要の目立った減退は見られない。本稿では、当社発行の不動産マーケットリサーチレポート・不動産投資市場編の最新版も踏まえ、不動産投資需要が維持されている要因について考察する。
 不動産投資の活発度を反映する期待利回り(=(想定賃貸収入-想定賃貸費用)/資産価値)を確認すると、オフィスに関しては、賃貸市場が堅調だったコロナ前の2019年10月まで緩やかに低下していたが、賃貸市場が悪化したコロナ禍の直近1年間でもほぼ横ばいで推移している。通常、賃貸市場が悪化すると、想定賃貸収入の低下につながり、投資検討が慎重になることで投資需要が縮小し、資産価値が下落することでより高い期待利回りが要求されるが、堅調な投資需要が維持される中でそのような傾向は見られない。
 不動産への投資需要が維持されている理由として、不動産の利回り水準が国内外の債券や証券化商品と比較して高いこと等から、投資家における主要なインカム獲得手段として、不動産投資が位置付けられていることがあげられる。近年、不動産を含むオルタナティブ投資比率を高める年金基金等の機関投資家は、運用の指標となる長期金利が低水準で推移する中、一定の運用利回りを達成するのが困難な状況が続いている。一方、投資の魅力度を判断するイールド・ギャップ(=期待利回り-長期金利)は厚い状況が維持され、不動産投資の相対的な利回りは高い。そのため、不動産への投資需要に目立った減退は見られない。当社アンケート調査で国内年金基金の動向を確認しても、コロナ禍で投資意欲が一時的に弱まったが、直近では投資が「増加」するとの回答が増え、「減少」するとの回答はコロナ前と同水準まで減っている。ワクチン接種の進展等により先行き不透明感が徐々に解消されつつあり、不動産投資需要は回復してきている。
 米国を中心に金融緩和政策の転換が議論され始めたが、低金利環境が急激に変化することは想定しづらく、投資家が一定の運用利回りを確保するのが困難な状況は当面継続する。そのため、相対的に高めの利回りが期待できる不動産への投資需要は維持されるものと考える。

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