不動産市場・ショートレポート(8回シリーズ)
アフターコロナでの新しい不動産市場⑧/不動産の資産価値

投資調査第1部長 研究主幹    馬場 高志

タイプ別の資産価値は、テナント需要の変化から投資選別進む。今後は回復局面をにらみ新たな動きへ。

 コロナ禍での不動産市場の変化を概観すると、特に賃貸市場では、各タイプのテナント需要が質・量両面から大きく変化しており、既存の不動産所有者や開発業者には、新たな市場に即したテナント誘致や開発等の対応が求められている。一方、投資市場では、コロナ禍で加速した低金利や伝統的資産における運用難(リターンの低下)、およびこれらの遠因となる先進国での高齢化や成熟化(成長率低下)を受け、グローバルな投資資金が新たな投資先を求め、我が国を含む多様なエリア・タイプへ投資を拡大している。

 ここでは、こうした賃貸市場および投資市場の変化の要因・背景を、コロナ禍前とコロナ禍で整理し、更に、市場規模が大きい東京エリアの主要5タイプの資産価値を、当社が推計・予測したタイプ別のキャッシュフローとキャップレートを用いて、収益還元価値=(賃貸収入-賃貸費用)/期待利回り、により推計・予測した。

 不動産の資産価値は、各不動産のキャッシュフローの原資となるテナントからの賃料収入が、企業業績や個人消費に依存することから基本的には我が国の経済成長に左右され、加えて不動産市場への投資圧力・資金流入状況に大きく影響される。コロナ禍前(~2019/10)は、いずれのタイプともプラス成長となり、特に成熟市場のオフィスや住宅は、持続的な資金流入により+5%超の安定成長、逆に成長市場の物流やホテルは、急激な資金流入が一巡し+3%未満に留まっていた。しかしコロナ禍直後の2020年は、各タイプともテナント需要が大きく変化したため、高い資金流入圧力の中でもタイプによる投資選別が進み、資産価値もタイプにより異なる動きとなった。2021年は、方向性は変わらないものの変化率は小幅(安定資産と目され資金流入が再開した住宅のみ拡大)となり、落としどころを探る展開となっている。

 今後は、オミクロン株の収束後には調整過程が終了し、各タイプとも新たな動きに移行すると思われる。特に、足元で低調な商業・ホテルは長期的な回復期待から改善が進むであろう。一方で、引き続き軟調なキャッシュフローが予想されるオフィス・住宅の資産価値は低調となろう。またEC拡大が一服する物流は高止まり(横ばい)と見込まれる。

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