不動産市場・ショートレポート(8回シリーズ)
アフターコロナでの新しい不動産市場⑦/不動産投資市場

投資調査第1部 主任研究員   田中 可久

安定的なオフィス・住宅、割安なホテル・商業等を物色し、存在感増す海外投資家。今後も投資拡大を予想。

 コロナ禍における国内の不動産賃貸市場では、特に企業業績の低迷に加え、テレワーク普及の影響が大きい東京の賃貸オフィス市場を中心に、軟調な状況が続いている。これに対し、国内の不動産投資市場は、コロナ禍が長期化した現在も概ね堅調な状況にある。これには、①国内投資家の様子見姿勢が早期に収斂、および②海外投資家による継続的な投資実行、等が主な理由として挙げられる。そこで本稿では、海外投資家による不動産投資の動向・要因・背景を俯瞰し、不動産投資市場の今後の方向性を示した。

 まず国内での取引額が最大の、東京都の賃貸オフィスの取引総額を見ると、コロナ禍の2020年は前年比で小幅減、また2021年も通年では同水準が見込まれ、不動産投資は活発な状況が続いている。このうち、買主属性別では、海外投資家による取引(クロスボーダー取引)が、コロナ禍前を上回り、またその比率(クロスボーダー割合)は、コロナ禍前の2019年から一貫して上昇傾向にあり、投資需要は旺盛である。また2021年の国内取引額上位10物件を見ても、その半数に海外投資家が関与するなど、100億円超の大型取引・物件を中心に、買主として海外投資家の存在感が高まっている。

 海外投資家が日本の不動産に投資する理由には、A:他国に比して大きいイールド・ギャップ(=不動産の期待利回り-10年物国債利回り)、B:政情面等の安全性、C:不動産市場の安定性、等が挙げられる。特にグローバル投資を行う海外投資家にとって、日本は、低成長ながらも一定の市場規模を有する、成熟したリスクの小さい市場であり、結果としてコア戦略(優良物件を対象にインカムゲイン重視の安定戦略)の対象となる。そのため、特に安定的なキャッシュフローが見込まれる賃貸住宅や、市場規模が大きく流動性が高い賃貸オフィスが、主な投資対象として選好される。なお足元ではEC市場の拡大を受け、他国と同様に賃貸物流施設への投資も増加している。一方で国内投資家と異なり、オポチュニティ戦略(物件の課題を解消し価値を高めてキャピタルゲインを獲得する成長戦略)を選好する海外投資家や外資系ファンドも一定程度存在する。このため、運営状況が厳しいホテルや商業施設も投資対象となり、全体の取引額を下支えしている。

 コロナ禍は、海外投資家にとって、現地調査が難しく投資判断が容易ではない時期と言えよう。にもかかわらず、実際は上述した多様な目的及び戦略に基づき堅調な投資が続いている。今後、米国金利等のリスク要因はあるものの、出入国制限の緩和が進めば、日本への投資圧力はさらに高まるものと予想する。

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