不動産市場・ショートレポート(8回シリーズ)
アフターコロナでの新しい不動産市場⑥/賃貸市場(ホテル)

投資調査第1部 客員研究員 河村 理恵

今後のホテル需要は渡航制限緩和後に外国人主導で回復。所得改善等からサービス品質への希求高まる。

 長引くコロナ禍により、ホテル市場の苦境が続く。国内宿泊施設の延べ宿泊者数のうち、日本人宿泊者数は緊急事態宣言発出の度に増減を繰り返すが2021年秋以降は回復基調が強まっている。一方、全宿泊者数の2割を占めていた外国人宿泊者数は、入国制限の長期化でほぼ蒸発した状態が続く。しかし先般、WHO(世界保健機構)やIATA(国際航空運送協会)では、水際対策の限界性およびワクチンや治療薬の普及状況を踏まえ、改めて加盟国に渡航制限の緩和・撤廃を勧告した。また米国等から「開国」の外圧も高まっている。慎重姿勢が目立つ日本ではあるが、渡航制限緩和の時機は近づきつつある。

 こうした環境が整う一方で、各種調査によれば、アジアを含む諸外国の旅行者にとって、日本の食や温泉等の観光資源および各種文化への関心は引き続き高く、入国制限の緩和に伴い訪日客数は再び従前水準まで回復すると見込まれる。但しUNWTO(国連世界観光機関)によれば、アジア地域では国際往来の正常化が進まず、訪日客の8割超を占めるアジア客は、欧米客に比べ回復時期が遅れる見込み。このため、変異株の影響もあり訪日客の回復ペースはやや緩慢となろう。それでも中長期的には、経済成長が続くアジア諸国からの訪日客は増加すると見ている。また滞在日数が長い欧・米・豪の訪日客も、ニーズに即したホテル供給等により客数増および客単価上昇が見込まれる。この結果、今後の国内ホテル需要(延べ宿泊者数)は、日本人需要は、ホテル利用の多い若年層・中年層の人口減少やweb会議の普及等により減少となるが、外国人需要の拡大がこれを補って、増加が続くと予想される。

 なお、コロナ禍後は、訪日客が国内の宿泊施設に求めるニーズは、コロナ禍前と異なる可能性が高い。すなわち先進国等では、コロナ禍での消費抑制に伴い家計貯蓄率が高まり、リベンジ需要や旅行予算を積み増す傾向がある。また、新興国を中心に、コロナ禍のさなかも経済成長が続き個人の所得水準も伸びており、これがコロナ禍後の客室単価の押上げに寄与する見込みである。また各種旅行調査によれば、世界的に、旅行時の消費において、ウエルネス(心身の健康)やサステナビリティへの関心が高まっており、モノ消費からコト消費へのシフトもうかがえる。こうした消費志向の変化を反映して、宿泊施設に期待するサービス品質も高度化・多様化すると見られ、今後は、受け入れ側のホテル運営者や行政等においても、供給「量」の充足から、ホスピタリティの「質」の充実へと戦略シフトが求められるであろう。

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