金融中期サイクルからみた中国の金融危機発生リスク

投資調査第2部 副主任研究員   荻島 駿

要約・概要

  • 中国恒大集団によるショック(一部の社債に係る利払遅延)の影響が懸念される中で、本稿では中国を含めた各国のマクロ金融指標から、今般の中国と各国の過去の金融危機局面との比較を試みる。
  • 具体的には、企業債務残高、民間住宅投資、民間設備投資、住宅価格の4指標について、金融危機との関連が深い8-30年周期の中期サイクル成分を抽出して比較を行った。
  • その結果中国は、①企業債務残高と住宅価格については、2016-17年にかけて大幅な上昇を示したものの、直近ではやや落ち着きを取り戻している。②また、住宅投資、設備投資は2013年頃の段階ですでにピークアウトしており、4指標すべてが過熱を示した日米韓の過去の金融危機事例と状況は異なっている、という2点が分かった。
  • 加えて、中期サイクル成分をもとに推計した「先行き2年間の危機発生確率」も、他国の金融危機時を下回っていることがわかった。ただし、構造改革等の先行きへの課題も多く、今後も市場動向を注視していく必要がある。

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