不動産市場・ショートレポート
新たな危機・新たな環境と不動産市場②/経済環境

投資調査第2部 副主任研究員   荻島 駿

2022年の経済見通しは、コロナ禍からの緩やかな回復を見込むものの、昨年末からは下方修正

 足元までの国内経済は、年初のオミクロン株流行やウクライナ情勢に伴うインフレにより回復ペースに鈍化がみられ、先行きは中国のゼロコロナ政策や米国の金融引き締めによる世界経済減速も懸念されている。こうした中、弊社が半年に1度作成する「不動産マーケットリサーチレポート(2022年5月時点調査)」では、先行きも緩やかな経済回復を見込むものの、見通しを前回調査時点から一段下方修正している。
 不動産賃貸市場の先行きを考える場合、インフレによるコスト増を賃料等に転嫁していけるかが今後の焦点になる。また、コロナ禍以降、アセット間の好・不調がより鮮明になっていることもあり、コロナ後の構造変化も見据えて市場予測をする必要がある。

インフレ・円安の不動産投資市場への影響は限定的

 賃貸市場への懸念が高まる一方、投資市場ではインフレ・円安は必ずしもマイナスの影響のみではない。
 この点についてまず円安の影響をみると、過去の海外投資家の日本への不動産投資は円安の際に増加する傾向にある。足元では資金流入がやや低下しているように見えるが、水準は依然高く、世界的に投資資金が潤沢な背景からも海外投資家の投資意欲は引き続き高いと考えられる。

 また、インフレが進む中で先行きの国内金利上昇の懸念はあるものの、仮に金利が小幅上昇した場合でも、不動産キャップレートへの影響は限定的とみている。2016年のマイナス金利導入以降のJ-REITのインプライド・キャップレートは、長期金利が低下する中で横ばいを維持している。これは、投資家が政策的な長期金利の低下分をリスクプレミアムに上乗せし、将来の金融政策正常化に向けたある種の「バッファー」(0.6~1%弱程度)を設けていることが要因と捉えている。

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