J-REITはESGトップランナーとして躍進、公表内容はさらに充実
~「GRESBリアルエステイト評価2022」参加実態の考察~

私募投資顧問部 主任研究員   菊地 暁

要約・概要

 2022年公表の「GRESBリアルエステイト」(以下「GRESB 」)では、J-REITは25銘柄が5Starを獲得、アジアセクターリーダーに9銘柄が選出されるなど、トップランナーとして躍進した。すでに多くの投資法人が環境パフォーマンス実績値(GHG排出量、エネルギー消費量、水消費量、廃棄物量)を把握し、時系列で公表をしているが、5Star・4Starを取得した投資法人のほぼ全てがGHG排出量、エネルギー消費量を公表しており、レーティングと公表率には強い相関が認められる。つまり、高いレーティングを獲得するためには、環境パフォーマンス実績値の把握と、GRESBへの開示が必要条件と言える。

 今後GRESBの評価のポイントは、目標値に対する進捗率や原単位での絶対水準比較に移っていくと考えられる。また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)対応では、気候変動による「リスクと機会」に関連する事業インパクト評価、シナリオ分析に基づく財務インパクト推計値の開示と、その推計値の第三者保証が重要となろう。GRESBで高い評価を得るためには、TCFD対応は避けて通れず、逆にGRESBに参加して高評価を目指すことは、必然的に気候変動問題を考え、行動する契機となる。気候変動対策はもちろんのこと、他の環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の課題に関しても、GRESBによる評価がJ-REITを含めた不動産ファンドとステークホルダーの有益なエンゲージメントツールとなり、業界のESG取組がより一層推進されることが期待される。

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