「私募REIT運用あり」の運用会社はESG取組率が高い結果に。
TCFD対応は全体的に途上、まずは「リスクと機会」の整理から始めよう

私募投資顧問部 上席主任研究員   菊地 暁

要約・概要

 不動産証券化協会・三井住友トラスト基礎研究所は、不動産運用会社を対象とした「不動産私募ファンドに関する実態調査」を実施しており、直近7回ではESGに関する取組状況を調査している。

 今回調査では、方針・体制、環境(E)・社会(S)について各5項目、計15項目の取組状況を調査したが、うち過去から継続的に質問している11項目ほぼ全てにおいて、回答者社全体のうち取り組んでいるとする回答者の割合(以下「取組率」)は前回よりやや低下し、不動産運用会社のESGへの取組増加は一服した感がある。そうした中でも、全項目において、私募REIT運用会社の取組率は運用していない会社より高い結果となり、私募REIT運用会社のESG取組意識の高さが裏付けられた。

 TCFDに関しては、「投資家からの開示要請の高まり」を「意識している」との回答割合が76%に達し、私募REITを運用する運用会社では91%と極めて高い結果となった。その一方で、TCFDの対応方針を社内で決定しているとの回答者は全体の3割強にとどまり、「戦略」と「指標と目標」に関する項目の実施は全体の3割に満たない状況であった。国内外の投資家によるTCFDへの対応を求める動きはますます強まっている中で、不動産運用会社は、TCFDについて、まずは「リスクと機会」の整理から着手し、次にはそれらのリスクにどう対応すべきかを早急に検討する必要がある。先送りすればリスクが顕在化する恐れが高まる一方で、早めに着手すれば、ノウハウの蓄積やレピュテーションの向上、さらには新たな機会の創出にも繋がるだろう。

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