データセンターのオフバランス化は‘技術革新’と‘長期契約’が鍵に

投資調査第2部 副主任研究員   菅田 修

  • 新しい設備を利用できることや、堅牢性・安全性の観点から、個々の企業で管理していた情報やシステムなどを専門の事業者がマネジメントするデータセンターに移行する流れは、今後より一層顕著になると考えられる。
  • 2013年時点のデータによると、データセンター事業者が運営するデータセンターの約半数近くが土地と建物のどちらも所有していないものであった。しかし、大手のデータセンター事業者ほど土地・建物を所有する傾向が強い模様である。
  • J-REITが保有するデータセンターは10年の賃貸借契約が多く、データセンター事業者にとっても一度開設すると移転や閉鎖をしにくいことから、長期契約を結ぶことに伴う弊害が比較的少ないものと推察される。そのため、データセンターは、事業性リスクが伴うものの安定したインカムを期待できる投資対象であると言える。
  • データセンター事業者にとっても、“箱”としてのデータセンターと“サービス”に必要な設備機器の両面に一度に投資するとなると、投資規模が肥大化し迅速な事業規模の拡大を阻害する恐れがあり、データセンターを保有から賃借する傾向が今後より鮮明になると見込まれる。

‘技術革新’によりデータ通信量が飛躍的に増加し、データセンターの重要性が増している

 通信ネットワークや携帯デバイスなどの発達に伴い、電車に乗りながら動画のニュースを見たり、写真やウェブサイトをシェアしたりすることが容易になった。それに伴い、やり取りされる情報量も飛躍的に増加し、それを管理・運用するために専用施設やサービスの必要性が増している(図表1参照)。

 その一翼を担うのがデータセンターであるが、一般企業が保有する稼働中のデータセンターは建物が築古のものも多く、建替などによる更新時期を迎えるケースも目立ち始めている。その一方で、ストレージなどの技術革新は年々加速度的に進展している。新しい設備を利用できることや、堅牢性・安全性の観点から、個々の企業で管理していた情報やシステムなどを専門の事業者がマネジメントするデータセンターに移行する流れは、今後より一層顕著になると考えられる。


図表1.ブロードバンド契約者のトラヒック総量

データセンターは半数近くがオフバランス化されているが、大手企業ほど所有する傾向が強い模様

 データセンター事業者からすると、様々なシステムやデータなどのアウトソースにより需要が増していく中で、迅速に事業環境を整える必要性が生じている。2013年に日本データセンター協会が開示した資料によると、データセンター事業者が運営するデータセンターの約半数近くが土地と建物のどちらも所有していないものであった(図表2参照)。しかし、大手のデータセンター事業者ほど土地・建物を所有する傾向が強い模様である。データセンターは、安全性の観点から具体的な立地を明かさないケースが多いことから、自社保有したい大手のデータセンター事業者は多いと推察される。

 海外に目を向けると、アメリカやシンガポールではデータセンター特化型ファンドが組成されており、投資対象となり得るアセットとして位置づけられる。国内においても、アメリカのDigital Realty Trustによるデータセンター建設や、J-REITや私募ファンドによる取得など、国内外の投資家によって日本のデータセンターを開発・保有する動きが散見される。


図表2.データセンターの所有形態(2013年度)

J-REITが保有しているデータセンターは‘長期契約’が中心であり、安定したインカムを期待できるアセット

 J-REITが保有するデータセンターのうち、産業ファンド投資法人が保有している5物件については、契約形態についての情報が同法人の開示資料から入手できる。これを見ると、10年間の長期契約を結び、その期中は解約不可であるものが多いことが分かる(図表3参照)。

 近年では、野村総合研究所が開発している大阪・彩都のデータセンターにおいて、データセンター事業者であるTISと30年以上もの長期間で賃貸借契約を結ぶことが話題となった。データセンターで扱わるシステムはダウンタイム無く運用されることが求められるケースが多く、一度運用を開始すると簡単には移転や閉鎖が出来ないことから、データセンター事業者にとっても長期契約を結ぶことに伴う弊害が比較的少ないものと推察される。そのため、データセンターは、事業性リスクが伴うものの安定したインカムを期待できる投資対象であると言える。


図表3.J-REITが保有するデータセンターの契約形態

急速な技術革新に対応するためにデータセンター事業者は建物への投資よりも設備投資を優先させるべき

 IT分野における飛躍的な技術革新によって現在の最新鋭設備でも早期に陳腐化してしまうリスクや、長期契約を締結している事業者の倒産リスクなど、不動産リスク以外のリスクはあるものの、データセンターはインカム重視のファンドとして投資対象となりうるアセットと言える。また、データセンター事業者にとっても、“箱”としてのデータセンターと“サービス”に必要な設備機器の両面に一度に投資するとなると、投資規模が肥大化し迅速な事業規模の拡大を阻害する恐れもある。

 IoTやFinTechなどのサービス領域の拡大、ストレージやネットワークの技術革新によって、“将来的に”と想定されていた事象の実現が“もうすぐそこ”にまで迫ってきつつある。こういった急速な変化に対応するためにも、データセンター事業者が本業に資本を集中させるのも一つの経営戦略となるだろう。近年は物流施設やホテル、ヘルスケア施設などの特化型REITの組成が相次いだが、日本においてもデータセンター特化型REITが上場する日も“将来的に”ではなく“もうすぐそこ”にまで迫っているのかもしれない。

関連レポート・コラム

地方都市での不動産投資は投資対象の多様化がキーポイントに (2016年3月29日)

関連する分野・テーマをもっと読む