不動産市場・ショートレポート(8回シリーズ)
コロナ禍で不動産市場は何が変わったか⑧/不動産の資産価値

投資調査第1部長 研究主幹    馬場 高志

コロナ禍による影響の違いを反映し、不動産の資産価値はタイプにより大きくばらつく。

 近年、不動産の資産価値の評価方法として、いわゆる収益還元法<不動産の資産価値=(賃貸収入-賃貸費用)/期待利回り>が一般化しつつある。特にその分子(=賃貸収入-賃貸費用)が不動産の賃貸市場における消費者・企業等の消費行動を映し出す一方で、その分母(=期待利回り)は不動産の売買市場における投資家の将来見通しや思惑を映し出す。このため不動産の資産価値とは、個別不動産の価値の大小に留まらず、我が国の賃貸市場と売買市場の両側面を反映した、不動産市場全体の動向や市況感を表す経済指標として捉え直すことができる。

 コロナ禍前の2019年10月時点では、全てのタイプの資産価値が前期比(=6カ月前比)プラスとなった。投資に過熱感のあったビジネスホテルは高止まる一方で、投資資金が遅れて流入した住宅市場は高い上昇率を示すなど、タイプによりそのフェーズは異なっていたが、不動産市況は概して好調であったと言えよう。

 しかしながら、コロナ禍でこうした状況は一変した。その影響の内容や大きさの違いを反映し、その資産価値はタイプにより異なる動きを示している。外出自粛を契機にEC(ネット通販)利用が加速し、保管・仕分け・輸送・配送等の拠点となる物流施設は、賃貸市場の好調が投資家を誘い、資産価値は大幅に上昇している。逆にインバウンド需要が激減し日本人の外出自粛やオンライン会議の活用で、利用客が激減したビジネスホテルは賃貸市場の悪化で投資家は弱気になり、資産価値は大幅に下落。一方、リモートワークの普及で、企業のオフィス利用や消費者の住宅志向が変化しており、投資家は様子見姿勢を強め、資産価値は伸び悩んでいる。さらに同じ商業施設でも、都心部の百貨店等は来客数が大幅減少するも、郊外の食品スーパー等は巣ごもり消費を追い風に客数を維持しており、資産価値の変化にも差が出ている。不動産の資産価値は、こうした各タイプのコロナ禍の影響を色濃く反映した結果となっている。

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